フリーランスは契約書を締結すべきか?契約締結の流れと注意点は?

日本でもフリーランスの方による経済規模は拡大しています。

「フリーランスの人も契約書を締結する必要はあるのか?」

「契約は、どういった流れで締結するのか?」

「契約締結の際に、何に気をつければ良いのか?」

本記事では、こういった点について、解説していきます。

なお、本サイトを運営する渡瀬・國松法律事務所に契約書のチェックを依頼される場合には、こちらのページからお願いいたします。お見積りは無料ですので、お気軽にご相談ください。

この記事を書いた人
渡瀬・國松法律事務所

東京都江東区所在の法律事務所
主に顧問弁護士のいないスタートアップや中小企業,フリーランスの方を対象に,事業規模等に応じた金額にてスポットでの契約書ドラフト/レビューのサービスを提供

フリーランスの方による契約書締結の必要性

まず、フリーランスの方による契約書締結の必要性を検討しましょう。

フリーランスの方とトラブル

結論から言うと、フリーランスの方も契約書を締結する必要は高いと考えられます。

2020年の統計によれば、契約上のトラブルに遭ったフリーランスの方は、45%にも及んでいます。

フリーランス協会「フリーランス白書2020」

契約書を作成しておくことにより、①トラブル遭遇のリスクを軽減したり、②トラブル遭遇時の解決スピードを速めることができると考えられます。

具体的には、次のようなメリットがあります。

  1. そもそも契約が成立していないと言われる事態を阻止できる。
  2. 取引条件につき「言った言わないの争い」を避けられる。
  3. 過大な責任を負わされるリスクを回避軽減できる。

特に金額が大きい重大な契約の場合には契約書を巻くことは不可欠になると考えられます。

実際の契約書締結の状況

フリーランスの方が契約書を締結することも増加しているようです。

フリーランス協会「フリーランス白書2020」

委任契約と請負契約と業務委託契約

フリーランスの方が契約を締結する場合、契約の種類には次の2つがあります。

  1. 請負契約
  2. (準)委任契約

請負契約と(準)委任契約の違いは次の点にあります。

仕事の完成(=成果の達成)が義務になっているか?

仕事の完成(=成果の達成)が義務になっているのが請負契約、仕事の完成(=成果の達成)が約束されていないのが(準)委任契約になると整理することができると考えます。

2020年に施行された民法改正により、(準)委任契約において、次の規定が新設されました。

委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約した場合において、その成果が引渡しを要するときは、報酬は、その成果の引渡しと同時に、支払わなければならない。

民法第648条の2第1項

(準)委任契約においても「成果」を予定されることになり、請負契約と(準)委任契約の差異が曖昧化しました。

しかし、この規定はあくまでも「成果に対して報酬を支払うことを約した場合」において『成果が引き渡されない限り報酬を支払う必要がないこと』を定めているに過ぎません。

約束されているのは「成果を達成すること」ではなく「成果に対して報酬を支払うこと」に過ぎず、成果を達成できなかった場合には、報酬を支払ってもらえないものの、それを理由とする損害賠償責任を負うことはないものと考えられます。

上記規定の新設後も、請負契約と(準)委任契約の違いは「仕事の完成(=成果の達成)が義務になっているか否か」にあると言えると考えられます。

この点については、TMI総合法律事務所の滝弁護士が出版している「債権法改正に伴う契約書レビューの実務」285頁注5もご参照下さい。

契約締結の流れ

次に、フリーランスの方が契約を締結する場合の契約締結の流れをご紹介します。

契約書締結フローの概要

契約締結までのフローの概要は次のとおりです。

  1. 基本的な取引条件の交渉
  2. 契約書案の提示
  3. 契約交渉
  4. 締結

契約書案はどちらが提示するのか?

一般に、大企業は契約書の雛形を用意しており、その雛形を大幅に修正することを嫌う傾向にあります。

そのため、このような大企業を相手にフリーランス側から契約書案を提示したとしても、結局大企業側の雛形ベースに変更されるほどの訂正を加えられ、時間の無駄になることがあります。

まずは先方に対し、フリーランス側から契約書を出して、それをベースに契約を締結してもらえる余地があるかを確認しましょう。

仮に、その余地があるのであれば、フリーランスの方から契約書案を提示する方がフリーランスにとって利益になるケースが多いです。

契約書は弁護士や専門家に確認してもらう必要があるのか?

フリーランスの方が契約書を締結する際、毎回必ず弁護士等に契約書をチェックしてもらう必要はないと思います。

しかし、金額が大きいなどの事情により、重要な契約に当たる場合には、契約書を確認してもらう方が安全です。

この点については、次の記事をご参照ください。

フリーランスの契約書と収入印紙

フリーランスの方が契約書を締結する場合、収入印紙が必要になる可能性があります。

印紙税は、印紙税法に定められる課税文書に対して課されるものです。

フリーランスの方が締結する契約書との関係で問題になるのは基本的に次の課税文書になります(印紙税法における印紙税額一覧表の第2号文書及び第7号文書)。

  1. 請負に関する契約書
  2. 継続的取引の基本となる契約書

それぞれの意味については、次の記事をご参照ください。

なお、上記記事にも記載しましたが、クラウドサインなどを用いた電子契約の方法を取れば収入印紙は必要なくなるため、印紙税を節約することができます。クラウドサインなどの電子契約の利用も検討してみましょう。

フリーランスの契約書と注意点

チェックポイント1:業務内容は明確か?

契約書を見る時、最初に業務内容が明確になっているかを確認しましょう。

これを忘れると、自分の想定以上の業務内容を約束してしまうことになりかねません。

契約書に記載されている業務の内容が不明確に感じる場合には、契約相手に対して「これは具体的にどういったことを求められているのですか?」と尋ねて確認するようにしましょう。

確認結果は契約書に反映してもらうことが望ましいですが、時間的制約等でそれが困難な場合には、確認結果をメールなどの文書の形で残しておくようにしましょう。口頭で聞き取った場合にも、録音しておく方が良いでしょう。

チェックポイント2:報酬の支払時期・支払条件は明確か?

報酬の支払時期と支払条件も、要確認事項です。

「どこまで何をすれば、どれだけの金額をいつまでに支払ってくれるのか?」

これを明確に確認しましょう。

契約書の文言が不明確な場合には、上記と同様に、契約相手に確認する必要があります。

チェックポイント3:報酬金額は想定と合っているか?

報酬金額も確認しましょう。

「報酬金額を確認しないわけがない。」

という方は多いと思いますが、報酬金額が高く思えても、実はフリーランス側が実費を負担しなければならないことになっており、実際手元に入る報酬額は大きくないというケースも存在します。

委託した業務に必要な費用をどちらの当事者が負担するのかを確認するのは重要です。

チェックポイント4:過大な損害賠償責任を負うことになっていないか?

受託した業務に関連して過大な損害賠償責任を負わされないようにするということも契約書締結の重要な目的の1つです。

こちらの記事を参照し、自己の損害賠償責任を限定することができないかを、しっかりと交渉するようにしましょう。

チェックポイント5:著作権を含む知的財産権の取り扱いはどうか?

フリーランスの方が業務の過程で知的財産権を発生させる可能性がある場合には、知的財産権の取り扱いが想定と異ならないかも確認するようにしましょう。

こちらの記事をご参照ください。

フリーランスの方は印鑑として実印を押す必要があるのか?

フリーランスの方は、署名欄に実印を押す必要があるでしょうか?

結論としては、法的には、必要ありません。

実務上も署名欄に実印を押印することまでを求められることは少ないように思います。

フリーランスの契約書とテンプレート

契約書を用意する必要が生じた場合、次の記事をご参照ください。

最後に

本記事では、①フリーランスの方が契約書を締結することの必要性、②契約締結の流れ、③契約締結に際して注意すべきポイントを解説してきました。フリーランスの方が、本記事を参考にしてトラブルを阻止することができることを願っています。

なお、本サイトを運営する渡瀬・國松法律事務所に契約書のチェックを依頼される場合には、こちらのページからお願いいたします。お見積りは無料ですので、お気軽にご相談ください。

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