Word雛形|顧客紹介の契約書

自分で事業を運営していると、やはり気になるのは顧客を獲得する方法です。

顧客を獲得する手段として「この人に取引先を紹介して欲しい。」「顧客を連れてきて欲しい。」と考えることも多いと思います。

本記事では、そのように考えた際に使える紹介契約の雛形を提供します。

顧客紹介の契約書の雛形

はじめに、弁護士である本サイトの運営者が作成した紹介契約の雛形を載せます。

以下では、紹介契約の締結の際に考えなくてはならないいくつかの事項について解説した後、この雛形の内容とアレンジ方法について説明します。(テンプレートの解説とアレンジ方法について知りたい方は最後の項目まで読み飛ばしてください。)

顧客紹介の契約書と印紙税

後ほど、上記のテンプレートの解説もしますが、まずは実際に雛形を使う際に必ず気にしなければならない印紙税について解説します。

印紙税は、印紙税法に定められる課税文書に対して課されるものです。そして、顧客の紹介契約との関係で問題になるのは「請負に関する契約書」と「継続的取引の基本となる契約書」になります(印紙税法における印紙税額一覧表の第2号文書及び第7号文書)。

請負に関する契約書

「請負」とは、当事者の一方(請負人)がある仕事の完成を約し、相手方(注文者)がこれに報酬を支払うことを約束することによって成立する契約をいいます。そして、請負には建設工事のように有形的なもののほか、警備、機械保守、清掃などの役務の提供のように無形的な結果を目的とするものも含まれるとされています(国税庁)。

顧客の紹介に関する契約は、原則として、「仕事の完成」を約するようなものではないといえます。顧客の紹介という無形的な結果を目的としているようにみえますが、顧客紹介契約の多くでは、「顧客の紹介」という結果(仕事の完成)を約束しているものではないと考えられるからです。

したがって、顧客の紹介に関する契約が「請負に関する契約書」として課税される可能性は低いです。

継続的取引の基本となる契約書

また、顧客の紹介に関する契約が「継続的取引の基本となる契約書」に該当する可能性も低いです。

「継続的取引の基本となる契約書」とは、特定の相手方との間において継続的に生じる取引の基本となる契約書のうち次の文書をいい、具体的には次の3類型のいずれかに該当する文書のことを指します(国税庁タックスアンサーNo.7104)。

  1. 売買取引基本契約書や貨物運送基本契約書、下請基本契約書などのように、営業者間において、売買、売買の委託、運送、運送取扱い又は請負に関する複数取引を継続的に行うため、その取引に共通する基本的な取引条件のうち、目的物の種類、取扱数量、単価、対価の支払方法、債務不履行の場合の損害賠償の方法又は再販売価格のうち1以上の事項を定める契約書
  2. 代理店契約書などのように、両当事者(営業者には限りません。)間において、売買に関する業務、金融機関の業務、保険募集の業務又は株式の発行若しくは名義書換の事務を継続して委託するため、その委託する業務又は事務の範囲又は対価の支払方法を定める契約書
  3. その他、金融、証券・商品取引、保険に関する基本契約のうち、一定のもの

顧客の紹介に関する契約は原則として、このいずれにも該当せず、「継続的取引の基本となる契約書」に該当する可能性は低いです。

ただし、顧客の紹介に関する契約とは言いながら、紹介だけではなく、顧客に対する請求業務等も委託する場合には、「売買に関する業務」を「継続して委託する」ものとして、「継続的取引の基本となる契約書」に該当する可能性もありますので、ご注意下さい(国税庁照会結果)。

電子契約と印紙税

ところで、最近、契約をクラウドサインなどを使って紙を使わずに契約したいという声をよく聞きますが、クラウドサインなどを使って電子契約を締結する場合には、印紙税は生じないと考えられています。

この根拠としてよく挙げられるのは、「印紙税に関する質問に対する答弁書」です。この答弁書において、「事務処理の機械化や電子商取引の進展等により、これまで専ら文書により作成されてきたものが電磁的記録により作成されるいわゆるペーパーレス化が進展しつつあるが、文書課税である印紙税においては、電磁的記録により作成されたものについて課税されないこととなるのは御指摘のとおりである」との答弁がされています。

また、国税庁も「コミットメントライン契約に関して作成する文書に対する印紙税の取扱い」というページにおいて「請求書や領収書をファクシミリや電子メールにより貸付人に対して提出する場合には、実際に文書が交付されませんから、課税物件は存在しないこととなり、印紙税の課税原因は発生しません。」との見解を公表しています。

顧客紹介と手数料

取引先を紹介してもらう際に、1番気になるのは、紹介手数料(いわゆるマージンですね。)だと思います。

したがって、次は紹介手数料の定め方について解説します。

月額報酬制

紹介手数料について、まず考えられるのは、月額報酬制です。

月額報酬制は、毎月の報酬額があらかじめ確定しているため、当事者間で将来的に報酬に関する争いが生じる可能性が比較的低いというメリットがあります。他方で、顧客の紹介実績がほとんどないにもかかわらず、契約の有効期間中継続して定額の報酬を払い続けなければならないといった事態が生じるリスクがあります。

変動報酬制

このリスクを回避する方法として考えられるのが、毎月の紹介実績に応じた変動報酬制です。

変動報酬制の設計としては、①紹介された顧客の人数に応じた報酬制と②紹介された顧客に対する売上高に応じた報酬制があると思います。

これらの変動報酬制は、いずれも紹介を依頼する人に対して、紹介業務を的確に遂行するインセンティブを与えることができるメリットがあります。

そして、②のような売上高に応じた報酬制を採用すれば、紹介から売上が生じた場合にだけ紹介手数料を支払えば足りることになるというメリットも享受できることになります。

もっとも、変動報酬制を採用する場合には、結果としての顧客獲得と、行為としての紹介業務の遂行との間の因果関係について、当事者間で争いが生じるリスクがある点には注意を要します。

紹介をした側は少しでも自分が関与すれば「自分がした業務のお陰で顧客が獲得できた」と主張するでしょうし、紹介を依頼した側は「紹介のおかげと言うよりは、むしろ他の要因でサービスを気に入って顧客になってくれた」と主張したくなるようなケースに遭遇することもあるでしょう。

したがって、変動報酬制を採用する場合には、この因果関係の判断基準を可能な限り明確化しておくことが求められます。

テンプレートの解説とアレンジ方法

顧客の紹介の定義など

顧客紹介の契約書において重要なのは「紹介手数料の発生対象とする業務の内容をどのように設定するか」です。

本サイトのテンプレートでは「紹介者の働きかけに起因して、依頼者が提供するサービスの購入を希望するに至り、依頼者の顧客となる合理的な可能性を有する者」の紹介としています。

したがって、紹介者の働きかけに起因せずに、紹介前から依頼者のサービスの購入を希望していた者を紹介しても、紹介したことにはなりません。また、当然ながら、依頼者のサービスに関して興味を有していないような第三者を依頼者に紹介したとしても、契約上、顧客の候補者を紹介したことにはなりません。

アレンジの方法としては、「紹介者の働きかけに起因して」という部分を削除して、紹介者の働きかけとは無関係に依頼者のサービスに興味をもっている人の紹介についても、顧客の候補者の紹介としてカウントすることなどがあり得ます。

なお、本サイトのテンプレートでは、紹介の対象となるサービスについて、「依頼者が提供するサービス」と広く定めていますが、「依頼者が提供する●●という名称のサービス」などとして、対象を限定しても良いです。

プロモーション活動の注意点

本サイトのテンプレートの2条では、紹介者によるプロモーション活動における注意点を定めています。

顧客の紹介契約においては、紹介者が、紹介手数料を欲するあまり、過剰なプロモーション活動を行なってしまい、依頼者自身や依頼者のサービスの評判を下げるような事態が生じるリスクがあります。本サイトでは、そのようなリスクを軽減するため、紹介者に対し、「(依頼者のサービスに関する)適切な説明」を行う義務を課すとともに、「依頼者および依頼者提供サービスの評判または信用を損うような行為」を禁止しています。

なお、紹介者がプロモーション活動を行うにあたっては、依頼者の商号やロゴ等を使用することがどうしても必要になると思うので、雛形では商号やロゴ等の使用を紹介者に許諾しています。

マージンの定め方

紹介手数料について、本サイトの雛形では、月額報酬制を定めています。そして、仮に紹介者が紹介に際して交通費などの費用を支出した場合であっても、当該費用を報酬とは別に依頼者に請求することはできないとしています。

紹介された顧客の人数に応じた変動報酬制を取る場合には、次のようなアレンジが考えられます。

Sample

1. 顧客候補者が本契約の有効期間中に依頼者から依頼者提供サービスを購入した場合(ただし、初回の購入の場合に限る)、依頼者は、紹介者に対し、顧客候補者の紹介に対する報酬として、当該顧客候補者1人あたり●万円(税込)を支払うものとする。
2. 依頼者は、紹介者に対し、毎月末日までに、当月中に前項の規定に基づき発生した報酬の総額を算出し、翌月末日までに、当該報酬の総額を、紹介者の指定する紹介者名義の銀行口座に振り込むものとする。

また、紹介された顧客に対する売上高に応じた報酬制を取る場合には、次のようなアレンジが考えられます。

Sample

1. 顧客候補者が本契約の有効期間中に依頼者から依頼者提供サービスを購入した場合(ただし、初回の購入の場合に限る)、依頼者は、紹介者に対し、顧客候補者の紹介に対する報酬として、当該顧客候補者から当該購入の対価として現実に受領した金額(税込)の●%に相当する金額(税込)を支払うものとする。
2. 依頼者は、紹介者に対し、毎月末日までに、当月中に前項の規定に基づき発生した報酬の総額を算出し、翌月末日までに、当該報酬の総額を、紹介者の指定する紹介者名義の銀行口座に振り込むものとする。

こちらのアレンジ例では、紹介された顧客が初回に購入した対価だけを紹介手数料発生の対象としていますが、紹介された顧客が継続的にサービスを購入し続ける場合に、その継続的な購入の対価のすべてについて紹介手数料の発生を認める場合は、次のようなアレンジも考えられます。

Sample

1. 顧客候補者が本契約の有効期間中に依頼者から依頼者提供サービスを購入した場合、依頼者は、紹介者に対し、顧客候補者の紹介に対する報酬として、当該顧客候補者から当該購入の対価として現実に受領した金額(税込)の●%に相当する金額(税込)を支払うものとする。
2. 依頼者は、紹介者に対し、毎月末日までに、当月中に前項の規定に基づき発生した報酬の総額を算出し、翌月末日までに、当該報酬の総額を、紹介者の指定する紹介者名義の銀行口座に振り込むものとする。

希望するマージンの決定方法に応じて、アレンジしてみて下さい。

その他

紹介を他者に依頼する場合には、紹介だけではなく、他にも経営上のアドバイスなども依頼し、そのような紹介とアドバイスの代わりに、紹介やアドバイスの対象となった事業から生じた収益を分配しようとすることがあると思います。

そのような場合には、単なる顧客紹介契約ではなく、業務提携契約といった形の契約を締結することが考えられます。

業務提携契約については、こちらの記事を参考にしてみて下さい!

最後に

本記事では、顧客の紹介に関する契約書のアレンジ可能なテーンプレートを提供するとともに、顧客の紹介契約における留意点を記載してきました。

本記事が、広い人脈を持つ第三者に顧客の紹介を依頼し、事業を拡張する際の一助となることを願っています!

顧客の紹介以外に、コンサル業務も依頼しようとするような場合には、次の記事も参考にしてみて下さい!(もっとも、こちらの記事で紹介している雛形は、コンサル業務を受ける側が優位な場合のものとなっている点にはご注意下さい!)

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