フリーランスのデザイナーの方に最適な契約書の雛形

「デザイナーとして仕事(ロゴの作成など)を受注する際に、契約書を用意しておきたい!」

本記事では、弁護士である執筆者が、こういった希望のあるフリーランスのデザイナーの方が使える契約書の雛形を、Wordで用意しました。

ロゴの作成等を受注するデザイナーが持つべき契約書の雛形

はじめに、弁護士である本サイトの運営者が作成した契約書の雛形を載せます。

以下では、フリーランスのデザイナーの方がロゴの作成等を受注して契約を締結する際に考えなくてはならないいくつかの事項について解説した後、この雛形の内容とアレンジ方法について説明します。

(テンプレートの解説とアレンジ方法について知りたい方は最後の項目まで読み飛ばしてください。)

フリーランスのデザイナーの契約書の雛形と印紙税

まず、実際に本記事に掲載しているフリーランスのデザイナーの方用の雛形を使う際に必ず気にしなければならない印紙税について解説します。

印紙税は、印紙税法に定められる課税文書に対して課されるものです。そして、デザイナーとしてロゴの作成等を受注し、契約を締結する際に問題になるのは「請負に関する契約書」になると思います(印紙税法における印紙税額一覧表の第2号文書)。

請負に関する契約書

「請負」とは、当事者の一方(請負人)がある仕事の完成を約し、相手方(注文者)がこれに報酬を支払うことを約束することによって成立する契約をいいます。そして、請負には建設工事のように有形的なもののほか、警備、機械保守、清掃などの役務の提供のように無形的な結果を目的とするものも含まれるとされています(国税庁)。

デザイナーとしてデザイン案を作成し、依頼者に納入することを約束することは「仕事の完成を約し」ていることに他ならないと思います。また、通常は、このデザイン案の納入に対して「報酬を支払うこと」が約束されると思います。

したがって、デザイナーが締結する契約には「請負に関する契約書」として、印紙税が発生することになります。

印紙税の額

請負に関する契約書に該当すると、印紙税が発生するわけですが、具体的には次のような金額になります(タックスアンサーNo.7102)。

契約金額(報酬金額)印紙税
1万円未満   非課税
1万円以上 100万円以下  200円     
100万円を超え 200万円以下      400円
<<印紙税額一覧表>>

印紙税は原則として収入印紙を契約書に貼り付ける形で納付します。

詳しい納付方法については国税庁が公開しているタックスアンサーNo.7129をご確認下さい。

電子契約と印紙税

上記のように印紙税の額は高くはないものの、収入印紙を購入すると言った手間をかけるのは面倒くさいですよね。

そう言った人には、電子契約をお勧めします。

なぜなら、クラウドサインなどを使って電子契約を締結する場合には、印紙税は生じないと考えられているからです。

この根拠としてよく挙げられるのは、「印紙税に関する質問に対する答弁書」です。この答弁書において、「事務処理の機械化や電子商取引の進展等により、これまで専ら文書により作成されてきたものが電磁的記録により作成されるいわゆるペーパーレス化が進展しつつあるが、文書課税である印紙税においては、電磁的記録により作成されたものについて課税されないこととなるのは御指摘のとおりである」との答弁がされています。

また、国税庁も「コミットメントライン契約に関して作成する文書に対する印紙税の取扱い」というページにおいて「請求書や領収書をファクシミリや電子メールにより貸付人に対して提出する場合には、実際に文書が交付されませんから、課税物件は存在しないこととなり、印紙税の課税原因は発生しません。」との見解を公表しています。

デザイナーの契約書の雛形と締結の方法

フリーランスのデザイナーとして本記事で提供している雛形を用いて契約を締結する場合、基本的には紙媒体で締結されることを予定しています。

もっとも、署名押印欄における押印はマストではないですし、自筆のみでも構いません。

ただ、上記の印紙税等の観点から、クラウドサインなどの電磁的方法によって契約を締結したいと考えられる方もいらっしゃると思います。

そのような方は、本記事で提供している雛形の末尾を次のように修正してお使い下さい。

sample

本契約の成立を証するため、本書の電磁的記録を作成し、委託者およびデザイナーが合意の後電子署名を施し、各自その電磁的記録を保管する。

この文言はクラウドサインが公式サイトで紹介している文言でもあります。

テンプレートの解説とアレンジ方法

基本的な枠組み

デザイナーは、デザイン案の納入を約束し、それに対して報酬を支払ってもらう形で契約を締結することが多いと思います。

したがって、本記事のテンプレートでも、数個のデザイン案を納入し、それに対して報酬を支払ってもらうことを想定した枠組みを採用しています。

また、フリーランスのデザイナーとしては、デザインが確定的に採用されて初めて報酬が生じる形よりも、実際に採用されるか否かにかかわらず、デザイン案をいくつか納入さえすれば報酬が発生する形の方が望ましいと思い、本記事の雛形では、そのような報酬制を前提とした雛形としています。

デザインに対する報酬

本記事の雛形では第4条において、デザインに対する報酬を定めています。

依頼者がデザイン案を承諾した場合だけでなく、デザイン案の納入後しばらく経っても依頼者から返事がない場合などにも報酬が発生し、請求できる形としています。

また、ここは依頼者との交渉次第では譲ってもいいようなところではあると思いますが、デザイン案を作成する上で必要となった諸経費については、デザイン案納入の対価とは別に請求できる形としています。

依頼者の情報提供

「デザイン案の作成を依頼されたにもかかわらず、依頼者が依頼者自身や依頼者のサービスに関する情報を全く提供してくれない。」

本記事の雛形第6条では、こう言った事態が生じた場合に備えて、依頼者が十分な情報を提供しなかった場合には、一切の責任を負わない旨を規定しています。

著作権の帰属など

フリーランスのデザイナーとして契約を締結する際に気になることの1つに、著作権等の帰属先などが挙げられると思います。

何も契約がない場合、著作権は原則としてデザイナーに帰属します。

しかし、デザイナーに仕事を依頼する依頼者は、基本的に、デザイナーが作成するデザイン案を依頼者の自由に使うことを予定していると思います。

そのため、本記事の雛形では、報酬全額の支払いと同時に依頼者に著作権等が移転する形としています。

他方で、従前からフリーランスのデザイナー自身が生み出し、使っていたような著作物に関する著作権についてまで依頼者に移転するというのは不合理だと思います。そこで、そのような「従前から有していた」知的財産権は、デザイナーに留保されることとしています。

デザイナーに著作権などの権利を帰属させつつ、デザイン案を使用する権利だけを依頼者に与える形を希望される場合には、第9条第1項・第2項をたとえば次のようにアレンジすることが考えられます。

sample

1.  本デザイン案にかかる著作権その他の知的財産権(著作権法第27条および第28条に定める権利ならびに著作権その他の知的財産権を受ける権利を含む。以下同じ。)は、デザイナーに帰属する。
2.  前項の定めにかかわらず、委託者は、本デザイン案を自由に利用できるものとする。ただし、委託者は本デザイン案の改変その他の翻案を行うことはできないものとする。

第三者の著作権の侵害

デザイン案の作成を依頼する側が一番恐れているのは、デザイナーから納入されたデザイン案が第三者の知的財産権を侵害するようなデザインであることだと思います。

他方で、デザイナーとしては、世の中に溢れている著作物を全て調査することは不可能であり、自分の知らないところでたまたま自分のデザイン案と似ている第三者の著作物があるような場合に、そのことの責任を負担することは避けたいと考えるのが普通だと思います。

そこで、本記事の雛形では、両者の思惑の間をとる形で「デザイナーは『デザイナーの知る限りにおいて』デザイン案が第三者の知的財産権を侵害していないことを表明し、保証する」という形を採用しています。

業績アピール目的での依頼者のロゴ等の利用

フリーランスのデザイナーとしてデザイン案の作成を依頼され、デザイン案を作成した場合、そのような作成依頼の事実はデザイナーとしての業績になると思います。

そこで、本記事の雛形では、業績アピール目的で、受注した案件に関する依頼者の商号や商標、ロゴを使用できる旨を書いています。

最後に

本記事では、主にフリーランスのデザイナーの方が利用できるような契約書のテンプレートを提供するとともに、デザインを受注する際に締結する契約に関する留意点を記載してきました。

本記事が、フリーランスのデザイナーの方が、その事業を拡張する際の一助となることを願っています!

タイトルとURLをコピーしました