令和3年ガイドライン|雇用契約と業務委託契約の違いは?

弁護士がよく受ける質問の1つに、次の問いがあります。

雇用契約ではなく業務委託契約にしたいのですが、どういう契約にすれば良いですか?

本記事では、この疑問に回答したいと思います。

雇用契約と業務委託契約の違いを気にする必要はない?

おそらく、多くの企業や使用者が雇用契約と業務委託契約の違いを気にされる理由は「労働基準法や労働契約法の適用可能性」を懸念されている点にあると思います。

しかし、そもそも雇用契約であれば労働基準法や労働契約法が適用されるという理解は、正しいのでしょうか。

実は、民法上の「雇用契約」と「労働契約」とを峻別すべきとの見解も有力に主張されています。この見解に立つと、雇用契約と業務委託契約の違いを検討する必要性は低くなり、本来検討すべきは労働契約と業務委託契約の違いであるようにも思われます。

もっとも、基本的には「雇用契約」と、労働基準法や労働契約法が適用される「労働契約」とは、同じものと考えて良いと考えますので、やはり雇用契約と業務委託契約の差異を気にする必要性は高いと考えられます。

雇用契約(=労働契約)と業務委託契約の違いは?

では、労働基準法や労働契約法が適用される雇用契約(=労働契約)と、業務委託契約の相違点は、どのような点に求められるのでしょうか。

労働契約法には、次の定義規定があります。

この法律において「労働者」とは、使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者をいう。

労働契約法第2条第1項

また、労働基準法には、次の定義規定があります。

この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所…に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。

労働基準法第9条

これらの規定を見ると、次の2つが重要と分かります。

  1. 「使用」性
  2. 「賃金」性

このことは、労働基準法研究会報告(労働基準法の「労働者」の判断基準について)でも明言されています(以下「研究会報告」と略します。)。

研究会報告では、①使用性と②賃金性とを総称して「使用従属性」と呼ぶこととしています。

雇用契約(=労働契約)と業務委託契約の違いは、この「使用従属性」の有無にあると言って良いでしょう。

令和3年ガイドラインと雇用契約(=労働契約)

ところで、研究会報告が示した「使用従属性」という基準は、雇用契約と業務委託契約の違い(=労働者性)を判断するための基準として、現在も有効と考えて良いのでしょうか。

研究会報告は、昭和60年12月に策定されたものであり、現在も依然として有効なのか、疑義が残るようにも思います。

しかし、令和3年3月26日に策定された「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」(以下「令和3年ガイドライン」といいます。)においても、研究会報告の立てた基準が引用されています。

したがって、使用従属性基準は、雇用契約と業務委託契約とを区別するための判断基準として、現在も有効に機能していると考えられます。

使用従属性基準の具体的検討

それでは、研究会報告や令和3年ガイドラインが雇用契約と業務委託契約の違い(=労働者性)を判断するためのものとして示した使用従属性基準について、詳しく検討しようと思います。

使用従属性基準は「①指揮監督下の労働であるか」と「②報酬が賃金として支払われているか」を確認するものとされていることから、以下①と②とを分けて記載します。

指揮監督下の労働であるか

まず、指揮監督下の労働であるか否かについては、次の考慮要素に基づき判断すべきとされています。

  1. 仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無
  2. 業務遂行上の指揮監督の有無
  3. 拘束性の有無
  4. 代替性の有無(指揮監督関係を補強する要素)

表題だけでは少し分かりにくい3つ目の要素と4つ目の要素について、補足します。

拘束性の有無

3つ目の拘束性の有無は「発注者等から、勤務場所と勤務時間が指定され、管理されているか。」を確認する基準です。発注者等から、勤務場所も勤務時間も指定されている場合には、一般的に、指揮監督下の労働と捉えやすくなると考えられます。

もっとも、令和3年ガイドラインの次の記載には気を付ける必要があります。

ただし、勤務場所や勤務時間が指定されていても、業務の性質上場所や時間が特定されている場合(演奏業務など)や、施設管理や作業者等の安全確保の必要性から勤務の場所や時間が一定の範囲に限定されている場合(建設作業など)もあることから、勤務場所や勤務時間の指定が業務の性質等によるものか、業務の遂行を指揮命令する必要によるものかの見極めが必要である。

勤務場所も勤務時間も指定されていたとしても、雇用契約ではなく、請負契約や委任契約などの業務委託契約であると評価される可能性もあるということです。

代替性の有無

4つ目の代替性の有無は「受注者本人に代わって他の人が労務を提供することが認められているか。」「受注者が自分の判断によって補助者を使うことが認められているか。」を確認する基準です。

令和3年ガイドラインには、次の記載があります。

労務提供に代替性が認められるかどうかは、指揮監督関係そのものに関する基本的な判断基準ではないが、発注者等から受けた仕事を、代役を立て、その代役の人にやってもらうことや、他の人に依頼して手伝ってもらうことが、発注者等の了解を得ず自らの判断で行うことができるなど、代替性が認められる場合には、指揮監督関係にないことを示す要素となる。

業務遂行者が、自らの裁量で再委託等を行うことができる場合には、雇用契約ではなく、委任契約や請負契約などの業務委託契約と判断される余地が高まるということですね。

報酬が賃金として支払われているか

次に、報酬が賃金として支払われているかは、「支払われる報酬の性格が、発注者等の指揮監督の下で一定時間労務を提供していることに対する対価と認められるか。」を確認することで検討する必要があると考えられます。

業務従事者に支払われる報酬に、このような対価としての性質が認められる場合には、使用従属性が認められる可能性が高まり、雇用契約と判断される可能性が高まります。

なお、この報酬の労務対償性については、当然のことではありますが、令和3年ガイドラインに記載されている次の事項には留意する必要があります。

報酬については、「労働者が使用者の指揮監督下で行う労働」に対して支払われるものが「賃金」であり、逆は成り立たないので、報酬の名目が「賃金」「給与」等であることを理由として「使用従属性」が認められることにはならない。

労働基準法における「労働者性」の判断を補強する要素

上記2点が、使用従属性を判断するための主要なポイントとなりますが、研究会報告や令和3年ガイドラインでは、これに加えて、いくつかの補強要素を提示しています。それが次の2つです。

  1. 事業者性の有無
  2. 専属性の程度

このうち、事業者性の有無は「仕事に必要な機械、器具等を、発注者等と受注者のどちらが負担しているか。」「仕事に対して発注者等から受け取る報酬の額が著しく高額ではないか。」などが考慮されることが示されています。

また、専属性の程度は「特定の発注者等への専属性が高いと認められるか。」が考慮されるものとされています。

最後に

本記事では、雇用契約と業務委託契約の違いについて、研究会報告と令和3年ガイドラインの記載をベースに、検討してきました。

特に令和3年ガイドラインについては、具体的な判断事例なども多数掲載されていることから、雇用契約と業務委託契約の違いを検討する際には、非常に参考になる資料だと思います。

本記事が、雇用契約と業務委託契約を区別する基準を把握するための一助となることを願っています。

なお、締結しようとする契約や締結済みの契約が雇用契約と評価される可能性が高いか、それとも業務委託契約と評価される可能性が高いかを確認されたい場合には、弁護士等の専門家に確認されるのが良いと考えます。

本記事の執筆者へのご相談につきましては、こちらのお問合せフォームから、お気軽にご連絡ください。

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