契約書の損害賠償条項のサンプルは?上限額を設定するには?

契約書の要確認事項を挙げていくと、間違いなく5本の指に入るのが、損害賠償に関する条項です。

本記事では、弁護士としての経験を踏まえて損害賠償について定める条項のパターンやサンプルを紹介します!損害賠償の上限額を設定しておく方法も解説します。

なお、本記事を読んだ上で、なお契約書の損害賠償条項の規定に不安が残るようでしたら、本サイトの運営者が提供するリスクチェックプランや、トータルチェックプランもご参照ください。

シンプルな損害賠償条項のテンプレートは?

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損害賠償条項の定めを最もシンプルに書くと、次のようになると思います。

Sample

甲および乙は、本契約の履行に関連して損害を被った場合、相手方に対し、当該損害の賠償を求めることができる。

Sample

甲および乙は、自己の故意または過失によって相手に損害が生じた場合、当該損害を賠償するものとする。

以下では、これをベースとして、どのようなアレンジが考えられるかを見ていきます。

損害賠償を負う場面を限定するには?

まずは、損害賠償を負う場面を限定する方法を考えます。

免責事項を設定する

1つ目として考えられるのは、免責事項を定めることです。

次のようにアレンジすることが考えられます。

Sample

1. 甲および乙は、本契約の履行に関連して損害を被った場合、相手方に対し、当該損害の賠償を求めることができる。
2. 前項の定めに拘らず、甲は、乙が甲のサービスと第三者のサービスを併用して利用することによって生じた損害については、責任を負わない。

主観的認識によって限定する

2つ目として考えられるのが、当事者の主観的認識によって限定することです。

具体的には、軽過失の場合には責任を負わないとすることなどが考えられます。

アレンジとしては、次のようになります。

Sample

甲および乙は、本契約の履行に関連して損害を被った場合(但し、相手方に故意または重大な過失がある場合に限る。)には、相手方に対し、当該損害の賠償を求めることができる。

Sample

甲および乙は、自己の故意または重大な過失によって相手に損害が生じた場合、当該損害を賠償するものとする。

損害賠償の賠償上限額を設定するには?

上限額を設定する条項のテンプレート

次には、賠償上限額を設定する例です。

両当事者の損害賠償責任を限定する場合

両当事者に関して賠償上限額を設定する場合、次の通りアレンジすることが考えられます。

Sample

甲および乙は、本契約の履行に関連して損害を被った場合、相手方に対し、当該損害の賠償を求めることができる。ただし、両当事者の賠償責任は、●円を上限額とする。

Sample

甲および乙は、自己の故意または過失によって相手に損害が生じた場合、当該損害を賠償するものとする。ただし、両当事者は、当該損害の金額が●円を超える場合であっても、当該超過金額を賠償する責任は負わないものとする。

何円を上限額とするかが難しい場合には、次のように定めることも考えられます。

Sample

甲および乙は、本契約の履行に関連して損害を被った場合、相手方に対し、当該損害の賠償を求めることができる。ただし、両当事者の賠償責任は、賠償責任を負う当事者が相手方から本契約に基づき取得した金銭の総額[の●倍に相当する金額]を上限額とする。

Sample

甲および乙は、本契約の履行に関連して損害を被った場合、相手方に対し、当該損害の賠償を求めることができる。ただし、両当事者の賠償責任は、損害を被った当事者が損害を被った時点までに本契約の履行のために支出した一切の費用の総額[の●倍に相当する金額]を上限額とする。

一方当事者の損害賠償責任を限定する場合

一方当事者に関してのみ賠償上限額を設定する場合、次のようにアレンジすることが考えられます。

Sample

甲および乙は、本契約の履行に関連して損害を被った場合、相手方に対し、当該損害の賠償を求めることができる。ただし、甲の賠償責任は、●円を上限額とする。

Sample

甲および乙は、自己の故意または過失によって相手に損害が生じた場合、当該損害を賠償するものとする。ただし、甲は、乙に生じた損害の金額が●円を超える場合であっても、当該超過金額を賠償する責任は負わないものとする。

上限額の具体的な設定方法としては、上記の両当事者の賠償責任を限定する場合と同様です。

賠償上限額の有効性

賠償上限額を設定する場合には、それが本当に法的に有効に機能するかを意識しておく必要があります。

賠償上限額の定めが有効か否かは、対象となる契約の相手が消費者契約法の適用を受ける消費者か、それとも事業者かによって判断基準が異なります。

相手が消費者の場合

契約相手が消費者の場合には、消費者契約法における次の規定に留意する必要があります。

第八条 次に掲げる消費者契約の条項は、無効とする。
 事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除…する条項
 事業者の債務不履行(当該事業者…の故意又は重大な過失によるものに限る。)により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除…する条項

消費者契約法(平成十二年法律第六十一号)

端的に言えば、次のことが定められています。

  1. 事業者に故意または重大な過失がある場合には、責任を限定することは許されない。
  2. 事業者に故意および重大な過失がなくても、責任を全部免除することは許されない。

したがって、結果的に許容されるのは、事業者に軽過失のみが認められる場合に、責任の一部を制限する規定(上限額を設定したり、賠償範囲を限定したりすること)ということになります。

相手が事業者である場合

これに対し、事業者が契約相手である場合には、消費者契約法の適用はないため、比較的に自由に賠償上限額を設定することが許されます。

もっとも、裁判例の中には、故意または重過失がある場合にも免責が受けられる結果が生じれば、当事者の衡平を著しく害するとして、その有効性に疑義が生じると判示するものがあります。有名どころでは、次のものが挙げられます。

  1. 東京地裁平成13年9月28日判決
  2. 東京地裁平成26年1月23日判決・判例時報2221号71頁
  3. 最高裁平成15年2月28日第二小法廷判決・裁判集民事209号143頁

そして、これらの裁判例を受けて、経済産業省が公開している「IT を利活用した新サービスを巡る制度的論点これまでの議論の整理」においては、故意または重大な過失がある場合に責任を限定しようとする規定は対事業者との間でも「無効又は制限解釈の可能性」があるとされています(同資料21頁等)。

損害賠償の範囲を変えるには?直接かつ通常の損害とは?

上記の賠償上限額の定めも、損害賠償責任の範囲を限定する方法の1つですが、別の方法としては、賠償の対象となる「損害」の範囲を限定することも考えられます。

こういう条項をよく見るように思います。

Sample

甲および乙は、本契約の履行に関連して損害(但し、直接かつ通常の損害に限る。)を被った場合、相手方に対し、当該損害の賠償を求めることができる。

Sample

甲および乙は、本契約の履行に関連して損害(但し、直接かつ現実の損害に限る。)を被った場合、相手方に対し、当該損害の賠償を求めることができる。

この条項例では、賠償範囲が「直接かつ通常の損害」や「直接かつ現実の損害」に限定されています。

日本の民法は「直接損害」と「間接損害」とを区別する建付けになっていないとされるため、このうち「直接の損害」に賠償範囲を限定しようとしている点は、実質的な意義はあまりないと思います。

また、おそらく「現実の損害」は、英米法において認められている懲罰的損害賠償における制裁および一般予防を目的とする賠償金が除かれることを意味するものと思われます(最判平成9年7月11日)。しかし、そもそも日本法の下においては懲罰的損害賠償は認められていません。したがって、「現実の損害」に賠償範囲を限定しようとしている点も、実質的な意義はあまりないと思います。

実質的な意義を有するのは賠償範囲を「通常の損害」に限定している箇所だけといえそうです(準拠法が日本法以外となる可能性を考慮すれば、他の限定も意味を持つのかもしれません)。

「通常の損害」に限定することで、特別の損害を賠償範囲から除外することできます。これによって、一般的には予想することができないような特別の事情による損害は賠償しなくても良いことになります。

なお、経済産業省の「~情報システム・モデル取引・契約書~(受託開発(一部企画を含む)、保守運用)〈第一版〉」の解説においては「現実の損害」を逸失利益の対比として取り扱っているようにも読めることから、現実の損害に限定することには逸失利益を除くという効果があると考える余地もあると思います。

最後に

本記事では、損害賠償に関する条項のテンプレートをいくつか挙げると共に、それらの解説を行ってきました。

本記事が契約書を作成し、あるいは契約書をレビューする際の一助になることを願っています!

なお、特に重要な契約などにおいては、多額の損害賠償責任を負担しなければならない事態を避けることができる書きぶりになっているか、弁護士などの専門家にも依頼し、しっかり確認することが必要だと思います。

特に業務委託の受注者となる場合には、この配慮が重要であると考えます。

本サイトの運営者も、業務委託契約書のリーガルチェックを行なっておりますので、もし必要でしたら、業務委託契約書のリスクチェックプランや、トータルチェックプランもご参照ください。

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