会社を経営する上では、何かと株主総会が必要になる機会が多いです。
「そもそも株主総会って何?」「株主総会っていつやればいいの?」と疑問を持つ方もいますよね。
中小企業やベンチャー企業だと、何をするのにも株主総会が必要となることがほとんどです。
たとえば、役員を変更したり、増資によって資金調達を受けたりする場合が考えられますが、単に契約を結ぶような場面でも、株主総会が必要となる場合があります。
本記事では株主総会って何?
という基本的なことから、いつ株主総会が必要なのか?
どうやって株主総会を開催すればいいのか?
について解説します。
株主総会って何?
株主総会とは、会社の所有者である株主が会社の意思決定を行う機会を言います。
たとえば、会社の名前を変更したり、新しい役員を選任したり、増資によって資金調達をしたりする場合には、すべて株主総会を開いて決める必要があります。
会社の意思決定をすることができるのは、基本的には株主であり、役員ではありません。
「私社長なんだけど、会社の方針決めれないの?」と疑問を持つ経営者の方もいるかもしれません。
しかし、社長が方針を決められるのは、そのような方針決定権限を株主から委ねられているからに過ぎません。
委任をしてはいるものの、最終的な意思決定権限は株主にあります。
そして、会社法上、株主総会が必要とされている事項については、社長に委ねられた範囲に含まれないため、株主総会が必要になるわけです。
株主総会って、どういう場面で必要?
では、会社法上で株主総会が必要な事項は、どのようなものでしょうか?
弁護士じゃないのに、いちいち法律を確認するのは面倒ですよね。
弁護士に聞いてみることや、意外に知られていない方法として、法務局に問い合わせてみるという方法も挙げられます。
法務局の「法人登記係」に「〜の手続き教えてほしいんですが・・・」と聞けばだいたいのことは答えてくれますから、ぜひ活用してみて下さい。
念の為、本記事でも、株主総会が必要な場面をいくつか列挙しておきます。
- 取締役の選任・解任
- 役員報酬の決定
- 株式の分割や併合
- 取締役と会社の利益が相反する取引の承認
- 資本金の減少(減資)
- 株式や新株予約権の発行
- 定款の変更
- 剰余金の配当
上記の中には、取締役会の設置会社においては、株主総会の決議ではなく、取締役会の決議で足りる事項もある点、ご注意下さい。
それぞれの手続について、別の記事でスケジュールを紹介していく中でも、順次株主総会の必要性については触れていくつもりです。
株主総会のスケジュール
さて、株主総会を開催することになれば、まずはスケジュールを立てることが重要になります。
株主総会のスケジュールを立てるときには、以下の事項を検討するのが有益です。
①実行したい事項のデッドライン
②株主総会開催日のデッドライン
③株主総会の招集通知の発送のデッドライン
ここでは、定款の変更(定款記載の事業目的を変更する場合など)を例にとって、株主総会のスケジュールの立て方をみていきましょう。
定款変更の内容によっては株主総会の決議以外の手続きが必要になりますので、具体的な手続きを行う場合には、ご注意下さい。
①実行したい事項のデッドライン
定款変更を行う場合、実行したい事項のデッドラインは、定款変更の効力を生じさせる日になります。
ここでは定款変更の効力発生日を6/30に設定したとします。
定款変更以外の手続きを行う場合も考え方は同じです。
取締役を選任する場合には取締役の選任時期、増資をする場合には増資の効力発生日(=払込期日又は払込期間)を基準に考えることになります。
②株主総会開催日のデッドライン
次に、株主総会開催日のデッドラインを考えます。
定款変更の効力は株主総会決議時に発生しますから、特に定款変更を急いでいない場合には、効力を発生させたい日と同日を株主総会の日とすることが可能です。
すなわち、定款変更の効力発生日と同日の6/30に開催することが可能です。
③株主総会の招集通知の発送のデッドライン
株主総会の開催日を決めたら、会社の定款を確認しましょう。
株主総会の招集通知の発送期限は多くの会社の場合、定款で定められています。
したがって、定款を確認することで招集通知をいつまでに発送する必要があるのかを確認することができます。
仮に、定款を確認したところ「株主総会開催日の1週間前まで」と規定されていたとしましょう。
この場合、招集通知の発送期限は6/22になります(中7日で計算します。)。
ここまで決まれば、株主総会のスケジューリングは完了です。
招集通知の発送期限が確定すれば、発送期限までに取締役の決定で株主総会の招集の決定を行えばいいですよね。
例であげた定款変更を行う場合の株主総会のスケジュールをまとめると、以下のようになります。
6/22まで
取締役会又は取締役の決定(株主総会の招集を決定)
6/22
株主総会の招集通知発送
6/30
株主総会開催
6/30
定款変更の効力発生
株主総会のスケジュールを立てる時は、上記のようなプロセスを踏んで立てるようにしましょう。
しっかりとスケジューリングすることで、株主の信頼を確保したり、焦ることなく準備を進めることができますから、株主総会のスケジュールを立てることは非常に重要です。
株主総会の招集通知の発送が間に合わない!ときや株主が経営者1名であるときは?
とはいっても、突然株主総会の開催が必要になる場合も考えられますよね。
株主総会のスケジュールを考えたときに、招集通知を発送していては間に合わない!
という場合には以下の方法が考えられます。
①招集手続を省略する
②書面決議にする
※ なお、招集通知を発送する余裕がある場合であっても、株主が経営者の方だけであったり、親族の方だけである場合もこちらの方が手続きが簡単ですから、こちらの手続きを選択する方が良い場合が多いです。
①招集手続を省略する
まず、株主全員の同意があれば、招集手続の省略が可能です。
招集手続を省略することで、招集通知の発送を省略することができます。
これにより、取締役の決定で株主総会の招集を決定して、同日のうちに株主総会を開催するということも可能になります。
また、招集通知には、議案の概要など会社法で定められた事項を記載する必要がありますが、招集手続を省略すれば、そんな記載事項に気を使う必要もありません。
しかし、上記のとおり、招集手続を省略するためには「株主全員の同意」が必要な点には注意が必要です。
株主全員の同意は株主総会の開催日までに取得する必要があります。
株主の数が多く全員から同意を取れない可能性や、全員から同意をとっていては逆に時間がかかる可能性もありますので、これらの点に注意が必要です。
もっとも、株主からの同意の取得方法に制限はありませんので、メールや極端な話口頭でもいいわけです。
後で争いになった場合に備えてできれば書面やメールなど記録が残る形で同意を取得することをおすすめしますが、どうしても時間がない場合には電話などで同意を取得することも考えられます。
②書面決議にする
株主総会の開催が難しい場合(会場を確保できない場合など)には、株主総会を実際には開催せずに決議があったものとみなすことができる書面決議が候補として上がります。
もっとも、株主全員から同意を取得する必要がある点には注意が必要です。
さらに、書面決議の場合には、招集手続の省略の場合と異なり、同意の取得方法が書面か電磁的記録(CD-Rなどの記録媒体)に限定されているのも注意が必要です。
書面決議を行う場合の書式の雛形については別記事で解説する予定です。
招集手続を省略して株主総会を開催するのが方法としては一番簡単だと思いますが、何らかの事情で株主総会を開催できない場合には、書面決議を検討しましょう。
最後に
株主総会のスケジュールの立て方や招集通知を省略する方法について解説しましたが、いかがだったでしょうか。
スムーズに手続きを進めるためには、スケジュールをしっかりと組むことが大切です。
スケジュールを組んでみることで、招集手続の省略の検討が必要か、書面決議の検討が必要かも明確になりますから、株主総会が必要な事項を実行する際は余裕をもってスケジュールを立てるようにしましょう。
専門家に依頼する際もスケジュールを予め組んでおけばスムーズに話が進みますし、スケジュールの調整し直しなどで追加コストがかかる可能性も低くなります。
株主総会に関する書式の雛形は別記事で解説する予定ですので、そちらもあわせてお読み下さい!