中小企業やベンチャー企業が減資をする機会は多いと思います。
多額の資金調達を行った場合や事業年度末が近づいてくると、税理士さんや弁護士さんから「そろそろ減資した方がいいですよ」とアドバイスを受けた経験がある方も多いのではないでしょうか。
「減資って何?どんな手続きが必要なの?」
という方は、こちらの記事で減資の手続きやスケジュールの組み方について解説していますのでご参照下さい。
さて、この記事を読んでいるということは、減資の手続きやスケジュールについてはだいたい知っている、理解している方が多いと思います。
しかし、いざ減資の手続きの準備を初めてみると、どんな書類が必要なのか、株主総会で何を決議すればいいのかわからないといった疑問が出てきますよね。
この記事では減資の手続きに必要な書類や株主総会で決議する必要のある減資の議案の雛形について解説していきます。
減資の手続書類の雛形はこちら!
減資の議案の雛形はこちら!
官報公告の文案についてはこちら!
当社は、資本金を●円減少することにいたしました。
この決定に対し異議のある債権者は、●年●月●日までにお申し出下さい。
なお、最終貸借対照表の開示状況は次のとおりです。
掲載紙 官報
掲載の日付 ●年●月●日
掲載頁 ●頁(号外●号)
【掲載日】●年●月●日
【住所】●
【商号】●
代表取締役 ●
登記すべき事項の例についてはこちら!
「資本金の額」金●円
「原因年月日」令和2年6月1日変更
減資の手続きで必要な書類リスト
減資の手続きに必要な書類は次のとおりです。
①取締役決定書
②株主総会招集手続省略同意書・委任状
③株主総会議事録
④官報公告
⑤知れている債権者への個別催告書
⑥登記に必要な書類
順番に解説していきます。
取締役決定書
取締役の決定で株主総会をいつ、どこで、何を決議するかを決定し、それを書面化することになります。
取締役決定書への押印はなんでも問題ありません。
クラウドサインでも大丈夫です!
株主総会招集手続省略の同意書・委任状
株主総会をいつ、どこで、何を決議するかを記載し、株主全員に発送します。
株主総会招集手続の同意書については、株主全員から回収する必要があります。
株主総会の招集手続を省略する方法については、別の記事をご参照下さい。
※株主全員から同意を得られない可能性がある場合には、原則どおり株主へ招集通知を発送する方法をとった方が良いです。株主総会の招集通知は所定の期間(多くは株主総会の1週間前)までに株主全員に対して発送する必要があります。
また、株主全員に対して決議事項を提案し、株主全員から同意を得ることで実際に株主総会を開催せずに決議があったものとみなすこと(いわゆる書面決議)もできます。
株主総会を書面決議で行う場合には、上記の記事をご参照下さい。
株主総会議事録
減資の手続きで決議する必要のある以下の事項を記載します。
(1)資本金の額をいくら減少するか
(2)減少する資本金の額の全部又は一部を準備金に組み入れるか否か
(3)減資する日
減資の議案については、雛形をベースに減資手続きの目的に応じて、「欠損填補のため」などの説明を記載してもいいですし、剰余金の処分を行う場合には、剰余金の処分の記載を追記することも考えられます。
減資の議案の注意点などについては、雛形中のコメントもご参照下さい。
官報公告
官報には以下の事項を記載します。
(1)資本金をいくら減少するか
(2)債権者はいつまで異議を申し出ることができるか
(3)最終事業年度にかかる計算書類
減資手続きにおいて官報公告を行うことは必須です。
上記事項を盛り込んだ案文をお近くの官報販売所に送り、申し込みを行いましょう。
資本金の額を資本準備金に組み入れる場合のアレンジ方法についてはこちら!
当社は、資本金を●円減少することにし、減少する資本金の額●円を資本準備金とすることにいたしました。
官報販売所への申し込みは、インターネットの申し込みフォームまたはFAXで行います。
知れている債権者への個別催告書
個別催告書には以下の事項を記載します。
(1)資本金をいくら減少するか
(2)債権者はいつまで異議を申し出ることができるか
(3)最終事業年度にかかる計算書類
個別催告書は会社が認識している債権者全員に送る必要があります。
※会社の定款上公告方法が電子公告や日刊新聞となっている場合には、官報公告に加えて電子公告等を行うことで知れている債権者への個別催告を省略することが可能です。
登記に必要な書類
減資手続きを行った際は、登記手続が必要となります。
減資の登記手続きには次の書類が必要となります。
・株主総会議事録
・株主リスト
・官報
・知れている債権者へ個別催告したことの証明書
・登記申請書
株主リストと登記申請書本体の雛形については、法務局のHPに掲載されていますのでそちらをご参照下さい。
知れている債権者へ個別催告したことの証明書
個別催告を行った全ての債権者の情報(氏名又は名称及び住所)を記載する必要があります。
債権者の数が多い場合や会社で所定のフォーマット等で債権者を管理している場合には債権者情報を別紙の形で添付することも考えられます。
※電子公告をした場合には、電子公告調査機関の調査証明書が必要になりますし(個別催告したことの証明書は不要になります。)、債権者がいない場合には、債権者がいない旨の上申書を提出することになります。
また、専門家に登記手続きを依頼する場合には、登記委任状が必要になります。
減資手続きの注意点
官報公告について
減資手続きの前に決算公告を行っておらず、減資の公告と同時に決算公告を行う場合には、最終貸借対照表の要旨を記載することになります。
最終貸借対照表の要旨については、官報の申し込みの際にBSとPLを官報販売所に提出することで作成してもらうことができます。
公告方法が電子公告や日刊新聞の場合には、「なお、最終貸借対照表の開示状況は次のとおりです。」の部分を次のようにアレンジすることが考えられます。
なお、最終貸借対照表の開示状況は次のとおりです。
【URL】https://●
なお、最終貸借対照表の開示状況は次のとおりです。
掲載紙 ●新聞
掲載の日付 ●年●月●日
掲載頁 ●頁(号外●号)
知れている債権者への個別催告書について
個別催告書の発送は官報掲載日まで(可能であれば同日)に各債権者に到達するように対応して下さい。
最後に
減資の手続きに必要な書類を雛形を紹介しながら解説しました。
全ての会社がそのまま使える雛形というわけではありませんが、中小企業やベンチャー企業の多くで利用できるものとなっていますので、ぜひご利用下さい。
よくわからないことやお気づきの点があればお問い合わせフォームからご連絡いただければ幸いです。
減資手続きを行う際に、専門家に丸投げしてしまうのも一つの方法ではありますが、スケジュールから手続書類の作成まで全て専門家に依頼すると非常にコストがかかってしまうケースがあります。
自社で作成できるものについては自社で作成し、作成した手続書類のレビューを専門家に依頼するだけでもコストを抑えることができる可能性が高いです。
減資手続きを頻繁に行う会社の場合、一度書類を作ってしまえば、あとはそれを使い回すことで作業効率を上げることにも繋がりますので、一度自社で書類を作成してみてはいかがでしょうか。